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雨滴はいずれ石を穿つという
たとえ、ほんの少しの力だとしても
幽霊屋敷だった
暗闇の罠で囲まれたフロア
尖兵として召喚したゴースト
霊堂を各所に配置してある
知の輝きの溢れる城だった
魔法の威力は知性でもって強化され
魔法効果で勇者の踏破を遅らせる
ところが――
彼女の幽霊屋敷は
火炎魔術勇者の炎上投射によって半焼してしまった
焼け跡に一人たたずむ
暗闇の罠も
霊堂も
ゴーストも燃えてしまった
罠は破壊され
勇者の侵攻を許し、撃破が遅れた
勇者はゆっくりと炎上をばらまき
幽霊屋敷のいたるところに延焼した
作戦は失敗だった
「終わりだ……」
ユニットは財産である
ひとたび召喚しそびれば、手に入らないものもある
焼けた炭を拾い、握って砕いた
もうすぐ勇者の侵攻が始まる
防衛設備を再建させ
完璧なプランと共に、売り上げを稼がなくてはいけない
今日のマーケットは寒々としていた
欲しいものがなく
つまりは、やりたいプランが見つからない
途方に暮れて、彼女は空を仰いだ
自分のやりたいことって何だろう
何をして戦えばよかったのだろう
先ほどの幽霊屋敷は、自分の中で最高傑作になるはずだった
けれども、それは消し炭と消えた
どうすれば、上手に生きれるのだろう
どうずれば、ブレずに進むことができるのだろう
それは、あやふやな煙となって空に伸びていた
「もう、諦めたい」
「何をあきらめるんだね?」
生き残ったゴーストが、彼女の隣にいた
「戦うことを」
「諦めるのも、また、戦うことだよ」
ゴーストは冷たい空気を纏いながら、焼け跡から伸びる煙を吹き飛ばす
「諦めた私は、負け犬だ」
「勝つことは戦うことだ。負けることと同じように」
彼女は、膝に手を突き、深くうなだれる
勝算はない
プランすらない
そして、時間は迫る
「どうすればいいの?」
「貫けばいい。自分を」
「それじゃ勝てない」
「それもまた、戦いの結果でしかない。貫けばいい。勝利も、敗北も」
焼けた炭に、一滴の涙がこぼれた
「私には自分がない。無を貫くことはできないよ」
「初めて魔王城を組み立てたことを、覚えているか?」
「昔のことだよ。今よりずっと下手だった」
ゴーストはゆっくりと空気に溶けていく
朝日が、彼の向こうに見える
「構わない。最初に戻っていけばいい」
「それじゃ勝てないよ」
「勝つというのは、誰かを打ちのめさねば得られぬものか?」
「君は、君自身を取り戻す。それは、最初のトロフィーの形と同じだ」
「……」
彼女は、ゆっくりと召喚を始める
ゴーストを従えた、冷気の城
「そうだ、それでいい。君は他者に打ち負かされるかもしれない」
「だが……」
ゴーストは、勇者の鼓動を見つけ、空を駆け上っていく
「君自身を失うよりずっといい。そして君には帰るべき始点がある。何度でもそこへ戻ってよい。その時君は……」
「何度でも君自身を取り戻すのさ」
たとえ、ほんの少しの力だとしても
幽霊屋敷だった
暗闇の罠で囲まれたフロア
尖兵として召喚したゴースト
霊堂を各所に配置してある
知の輝きの溢れる城だった
魔法の威力は知性でもって強化され
魔法効果で勇者の踏破を遅らせる
ところが――
彼女の幽霊屋敷は
火炎魔術勇者の炎上投射によって半焼してしまった
焼け跡に一人たたずむ
暗闇の罠も
霊堂も
ゴーストも燃えてしまった
罠は破壊され
勇者の侵攻を許し、撃破が遅れた
勇者はゆっくりと炎上をばらまき
幽霊屋敷のいたるところに延焼した
作戦は失敗だった
「終わりだ……」
ユニットは財産である
ひとたび召喚しそびれば、手に入らないものもある
焼けた炭を拾い、握って砕いた
もうすぐ勇者の侵攻が始まる
防衛設備を再建させ
完璧なプランと共に、売り上げを稼がなくてはいけない
今日のマーケットは寒々としていた
欲しいものがなく
つまりは、やりたいプランが見つからない
途方に暮れて、彼女は空を仰いだ
自分のやりたいことって何だろう
何をして戦えばよかったのだろう
先ほどの幽霊屋敷は、自分の中で最高傑作になるはずだった
けれども、それは消し炭と消えた
どうすれば、上手に生きれるのだろう
どうずれば、ブレずに進むことができるのだろう
それは、あやふやな煙となって空に伸びていた
「もう、諦めたい」
「何をあきらめるんだね?」
生き残ったゴーストが、彼女の隣にいた
「戦うことを」
「諦めるのも、また、戦うことだよ」
ゴーストは冷たい空気を纏いながら、焼け跡から伸びる煙を吹き飛ばす
「諦めた私は、負け犬だ」
「勝つことは戦うことだ。負けることと同じように」
彼女は、膝に手を突き、深くうなだれる
勝算はない
プランすらない
そして、時間は迫る
「どうすればいいの?」
「貫けばいい。自分を」
「それじゃ勝てない」
「それもまた、戦いの結果でしかない。貫けばいい。勝利も、敗北も」
焼けた炭に、一滴の涙がこぼれた
「私には自分がない。無を貫くことはできないよ」
「初めて魔王城を組み立てたことを、覚えているか?」
「昔のことだよ。今よりずっと下手だった」
ゴーストはゆっくりと空気に溶けていく
朝日が、彼の向こうに見える
「構わない。最初に戻っていけばいい」
「それじゃ勝てないよ」
「勝つというのは、誰かを打ちのめさねば得られぬものか?」
「君は、君自身を取り戻す。それは、最初のトロフィーの形と同じだ」
「……」
彼女は、ゆっくりと召喚を始める
ゴーストを従えた、冷気の城
「そうだ、それでいい。君は他者に打ち負かされるかもしれない」
「だが……」
ゴーストは、勇者の鼓動を見つけ、空を駆け上っていく
「君自身を失うよりずっといい。そして君には帰るべき始点がある。何度でもそこへ戻ってよい。その時君は……」
「何度でも君自身を取り戻すのさ」
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