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霧の残像領域

長文を流したいけど皆さんのTLを汚したくないときに使う場所です

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四畳半のコラム「孤独なファイター」
生まれた時からファイターで
死ぬときまできっと


・・・・・・・


彼はファイターとして生まれた
ファイターというモンスターは人間に似ている
器用貧乏な性能と評される
目立たず、光の当たらない種族

彼は、ダンジョンをさまよっていた
彼を雇ってくれる魔王、それを探して

ガチャガチャ鳴る鎧
錆びて鞘から抜けなくなった剣
気付けばこんな姿になっていた

「生まれたときは、みな輝いていたのに」

愚痴る声も闇に消える
ほの暗いランプの光は足元まで届かない


・・・・・・・


そもそも、魔王は消えようとしていた
原因ははっきりしている

カルマの神≪ベネリウム≫
そして、禁忌選定委員会

ベネリウムは世界の破滅を予見し
禁忌選定委員会はその原因を調査した
そして、一つの結論を出す

原因は、一人の魔王であると

世界が滅びるなら、魔王である意味がない
なぜなら、財宝を魔王城に溜め込んでも、無意味だから
ほとんどの魔王はそう考え、勇者に転職し、散財を始めてしまった

だって、勇者ならアイテムを好きなだけ買って
モンスターを虐めて
どんどんレベルアップして
楽しい暮らしを送ることができるから

魔王なんてつまらない
勇者をもてなして
勇者に満足してもらって
自分を押し殺し、勇者の立役者になって
苦痛の対価とばかりにお金をもらうだけ

そのお金も意味がなくなる。世界が滅びるから

だから、魔王は消えていく

そして、彼の居場所も、消えていく


・・・・・・・・・


孤独なファイターが、職場を探してダンジョンを歩き続けていた

彼の居場所はない。少なくなった魔王の元へは、もっと優秀な護衛が名乗りを上げて、彼のような器用貧乏な護衛はなかなか雇用されない

ランプの油がじりじりと焦げてきた。もうすぐ消えてしまうだろう
最後に、最後に彼は願った

「頼む、俺を認めてくれ……世界に、俺の居場所があるって、証明してくれ……」

疲れ果て、彼は歩みをやめた。ランプの灯が消える
闇の中、狼がやってきて、彼の身体を食いつくしてしまうだろう
そんな、はぐれ護衛たちを何度も見てきた

雑巾のように汚れた衣装のまま、うずくまるプリンセス
骨と皮だけのようなビースト
喚き声を上げて自爆したボマー

みな、最後は狼の餌になってしまった
静かに、彼は自らをそれに重ねて、涙した



彼は顔を上げる
ダンジョンの闇にまばゆいネオンサイン
四畳半の領域が姿を現す
魔王だ
魔王がやってきたのだ

「まさか」

「南にベッドを、東に書を。西へゆくものに、迷宮の道を」

シルクハットをかぶった紳士が、ネオンサインを身にまとい立っていた

「硬質に一つ足りない。きみ、接客はできるかね?」

「どうして、俺を、見つけて……」

紳士はにやりと笑う

「ひとつ、マーケットの主が、私を導き」
「ふたつ、君が……ここまで、歩いてきたからだよ」



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