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霧の残像領域

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グレムリンズギフトⅠ chapter1 『到達点』 sectionC
……

どこへ向かっているのだろう。人は、必ず目的があって行動する。到達する場所があるということだ。しかし、今の私は、まるでランダムに漂うブイのように頼りない。これでは、どこへも到達できない。

未識別兵器群……世界の脅威。どこからともなく現れて、全てを破壊していく。そして、その黒幕も理由も分からない。狂気によって一方的に殴られ続けている。私は、そういった奴らの掃討に駆り出されていた。テイマーズケイジの仕事だ。

きりがない。どこからともなく湧き出す敵を、次々と撃ち落としていく。徹甲速射砲のサイトに捉え、撃つ。デュアルサイスの間合いに近づき、斬る。ルーチンワークだ。退屈な、掃討だった。敵はそのたびにこちらを学習し、機体を改良してくる。それでも敵わない。この私には。

いや、ダスト・グレムリンには。

「この戦いに意味はあるの?」
「世界を護るために、必要です」
「護って、護り続けて、そこに勝利はあるの?」
「世界の維持なくして、勝利はありません」

無感情に告げるTsC(テイマーズケイジ)のオペレーター。世界は疲弊していた。終わりなき戦いに全ての勢力の全力をもって戦っても、なお終わりは見えない。そして、物資や人員、資源、領域はじわじわと削られている。

そしてそれは、七月戦役の傷跡癒えぬ世界には、重すぎる任だった。傭兵たちは金が舞い込んできて潤っているかもしれないが、それはいつまで続くか分からない。

「私はさっさとたどり着きたい」
「どこへ?」
「ゴールに、よ」

敵勢力の全滅を確認。ただ、明日には復活している。以前よりも、強くなって。どうしようもない。根本的な発生源の糸口さえ掴めない現状では、削り殺されるだけだ。

「その機体さえあれば、我々はたどり着けます」
「どうやって」

こうして、無限に敵を叩いているのに、一向にそんな気配はない。オペレーターは珍しく、くすくす笑った。

「虚空領域を永劫化して、救済される、ということです」
「またそれ?」

この専属オペレーターも、No.2も、全く自分の介さぬところで訳のわからない陰謀を企んでいるようだ。それでも、任務だから乗るしかない。気に食わなくとも、なびくほかない。

自分にはゴールが見えていない。この掃討の結果、どうなるかすら。とりあえず、言うことを聞くしかないのだ。その結果、どうなるだろう。

私は幸福になるのか、不幸になるのか、何も変わらないのか。まったく掴めない。ランダムに漂うブイ。それがたまらなく居心地が悪い。オペレーターやNo.2は、到達点が見えている。

「とりあえず、戦えばいいんでしょう」
「正答です。カザミサ。さぁ、戦いましょう」

戦いの果てに、何が待っているのだろうか。

マシンが悲鳴を上げたように軋み、すさまじい動きで突撃を開始する。敵の第二波だ。これも全滅させればいい。私はどこまでも無感情だった。

ただ、

このマシンは……ダスト・グレムリンは、


まるで笑っているようだった。


>>next chapter2 『グレムリン』

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