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……
「グレムリンは最強の兵器だ」
整備士が言う。ドックの中には彼と私しかいないので、てっきり話しかけられたのかと思ったがそうではないようだ。整備士は自分に言い聞かせるように言う。そう、このグレムリンを見上げて。グレムリン……発掘され、解析された、驚異の兵器。
「こいつの可能性は、無限に続いている」
このグレムリンは確かに強い。強すぎる。現行の兵器では全く相手にならない。軍艦の主砲は当たる前に謎の壁に阻まれ弾き飛ばされる。いや、当たる前にすさまじい機動力で反対側へと駆け抜けてしまう。ドローンや他の小細工は全て同様に蹴散らされる。もはや無敵だ。七月戦役で見たのは、一方的な蹂躙だった。テイマーズケイジのゴースト・グレムリンはそれほどまでに強すぎた。強すぎたのだ。
「おれはグレムリン大隊を目にしたとき、そう心底思ったよ」
私はピクリと眉をあげた。彼の家族は七月戦役でグレムリンの放った術導砲に巻き込まれて死んだと聞いていた。いや、あの七月戦役でケイジに属していない人間なら、誰しもが……グレムリンの脅威にさらされて、被害を受けたはずだ。考えても仕方のないことだが。
「今日も、テストかい? 整備は完璧に終わってるぜ」
「いや、単にダストの顔を見に来ただけだ」
鏡のようにのっぺりとした頭部。その下に、乱杭歯の醜い顔があることは知っているが、なかなかにスマートな顔つきである。私は戦いの中で、このダスト・グレムリンに近づこうとしている。知ろうとしている。そして、分かろうとしている。
「いつもと変わらん顔だ。帰る」
「おっと、カザミサ。今日は出撃命令が出ているはずだが」
「キャンセルだ」
――直感を信じろ、と言われていた。直感が思わしくなければ、何をしてもいいと言われていた。出撃拒否も、半信半疑だが、以前試したら通った。不思議である。
特別。
例外。
異端。
私も、このダストも全てが規格外だ。だから、私はそのようにする。私の選択が正しいかどうかは分からない。ただ、直感を信じろと言われたので信じる。それだけだ。
次の日、ドックに向かうと見知らぬ女がいた。整備士の格好をしているのだから整備士なのだろう。
「いつもの整備士はどうした?」
「ああ、彼なら処刑されました」
「なん……?」
聞けば、ダスト・グレムリンに細工をした罪に問われたという。あのまま出撃したらエンジンが暴走して爆死していたかもしれない。そう聞かされて、ただ茫然とするほかなかった。
彼はきっと、グレムリンに恨みを抱いていたのかもしれない。あるいは、絶対に死ななない私を試したかったのかもしれない。それはもう分からない。ただ……。
ダスト・グレムリンを見上げる。
彼はいつものように、笑っているようだった。
>>next sectionB
「グレムリンは最強の兵器だ」
整備士が言う。ドックの中には彼と私しかいないので、てっきり話しかけられたのかと思ったがそうではないようだ。整備士は自分に言い聞かせるように言う。そう、このグレムリンを見上げて。グレムリン……発掘され、解析された、驚異の兵器。
「こいつの可能性は、無限に続いている」
このグレムリンは確かに強い。強すぎる。現行の兵器では全く相手にならない。軍艦の主砲は当たる前に謎の壁に阻まれ弾き飛ばされる。いや、当たる前にすさまじい機動力で反対側へと駆け抜けてしまう。ドローンや他の小細工は全て同様に蹴散らされる。もはや無敵だ。七月戦役で見たのは、一方的な蹂躙だった。テイマーズケイジのゴースト・グレムリンはそれほどまでに強すぎた。強すぎたのだ。
「おれはグレムリン大隊を目にしたとき、そう心底思ったよ」
私はピクリと眉をあげた。彼の家族は七月戦役でグレムリンの放った術導砲に巻き込まれて死んだと聞いていた。いや、あの七月戦役でケイジに属していない人間なら、誰しもが……グレムリンの脅威にさらされて、被害を受けたはずだ。考えても仕方のないことだが。
「今日も、テストかい? 整備は完璧に終わってるぜ」
「いや、単にダストの顔を見に来ただけだ」
鏡のようにのっぺりとした頭部。その下に、乱杭歯の醜い顔があることは知っているが、なかなかにスマートな顔つきである。私は戦いの中で、このダスト・グレムリンに近づこうとしている。知ろうとしている。そして、分かろうとしている。
「いつもと変わらん顔だ。帰る」
「おっと、カザミサ。今日は出撃命令が出ているはずだが」
「キャンセルだ」
――直感を信じろ、と言われていた。直感が思わしくなければ、何をしてもいいと言われていた。出撃拒否も、半信半疑だが、以前試したら通った。不思議である。
特別。
例外。
異端。
私も、このダストも全てが規格外だ。だから、私はそのようにする。私の選択が正しいかどうかは分からない。ただ、直感を信じろと言われたので信じる。それだけだ。
次の日、ドックに向かうと見知らぬ女がいた。整備士の格好をしているのだから整備士なのだろう。
「いつもの整備士はどうした?」
「ああ、彼なら処刑されました」
「なん……?」
聞けば、ダスト・グレムリンに細工をした罪に問われたという。あのまま出撃したらエンジンが暴走して爆死していたかもしれない。そう聞かされて、ただ茫然とするほかなかった。
彼はきっと、グレムリンに恨みを抱いていたのかもしれない。あるいは、絶対に死ななない私を試したかったのかもしれない。それはもう分からない。ただ……。
ダスト・グレムリンを見上げる。
彼はいつものように、笑っているようだった。
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