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「下の階層でドラゴンが目覚めそうだ」
「天使の集団が32階層上で失踪したらしい」
「今年のトレンドは……猫の置物!」
酒場で交わされるたわいもないウワサ
ウワサはどこまでも広がり、形を変え
信憑性を失っていく
【禁忌指定1号】は魔王だった
彼は、その日も酒場で広域メッセージを聞いていた
彼は酒場でのささやきが好きだった
彼はどこへも行かず
想像の世界を旅していた
その日も、噂を聞きに酒場へとやってきた
「カガクの力って?」
「この世はドラゴンの見る夢のかけら」
「ドゥルガー試験を目指す君へ……」
無数に流れゆく噂に、彼は一つの言葉を聞いた
「黄金の楔は、すでに破壊された」
その時彼は、持っていたグラスを落としてしまった
慌てて零れた飲み物を拭く
確かに聞いた
確かに聞いたのだ
”黄金の楔は、破壊された”ということ
「そんなはずはない」
虚空を見下ろした【禁忌指定1号】は、震える手で机をぬぐった
黄金の楔
それは、この世のルールである
神なき世に我々は経済を新たな神とし、黄金の担い手となることを――
つまりは、この世の全てのいざこざをお金で解決しよう
というルールである
そして、オーバーロードナイトと呼ばれる魔法鉱石の力で作られたのが
黄金の楔である
そして、あらゆる係争はお金で解決できるようになった
勇者がモンスターを殴るなら、お金を支払わなくてはならない
勇者がダンジョンからアイテムを持ち出すなら、お金を支払わなくてはならない
魔王が村を焼くなら、住民を退避させ、お金を支払ってから焼く
魔王は四天王結成の際に、雇用契約を結び給料を支払わなくてはならない
そう決まったはずだ
決まったはずなのに
「黄金の楔は、すでに破壊された」
【禁忌指定1号】の好奇心が刺激された
もしかして
もしかすると
今この瞬間酒場を焼いても
お金を支払わなくていいのでは
焼け死ぬ誰かのことを考えなくてもいいのでは
……本当は、お金のルールなんか形式上のもので
本当は、本当は、本当は――自由なのでは?
試したく
なってしまったのだ
【禁忌指定1号】はそのようにして、3つの階層を炎で焼き尽くした
気付いたのだ
だれも、彼を止められないことに
「黄金の楔は……どうなっているんだ?」
「お金ですべて解決できるはずじゃなかったのか?」
「金ならいくらでも出す!た、助けてくれ……」
不安がダンジョンでささやかれたころ
動き出したものがいた
彼らこそ、カガクシャ
そして、【禁忌指定1号】を抹消し、不安はただの荒唐無稽な噂に変わった
あらゆる脅威を、ただの噂に変えていく
1号から10号まではそれでよかった
だが、11号のアンデライト魔王は……そうはいかなかった
知られてはいけない
それをカガクシャは知っている
どこかでまた、噂話
「黄金の楔は、破壊されたよ」
それを、カガクシャは、知っているのだ
「天使の集団が32階層上で失踪したらしい」
「今年のトレンドは……猫の置物!」
酒場で交わされるたわいもないウワサ
ウワサはどこまでも広がり、形を変え
信憑性を失っていく
【禁忌指定1号】は魔王だった
彼は、その日も酒場で広域メッセージを聞いていた
彼は酒場でのささやきが好きだった
彼はどこへも行かず
想像の世界を旅していた
その日も、噂を聞きに酒場へとやってきた
「カガクの力って?」
「この世はドラゴンの見る夢のかけら」
「ドゥルガー試験を目指す君へ……」
無数に流れゆく噂に、彼は一つの言葉を聞いた
「黄金の楔は、すでに破壊された」
その時彼は、持っていたグラスを落としてしまった
慌てて零れた飲み物を拭く
確かに聞いた
確かに聞いたのだ
”黄金の楔は、破壊された”ということ
「そんなはずはない」
虚空を見下ろした【禁忌指定1号】は、震える手で机をぬぐった
黄金の楔
それは、この世のルールである
神なき世に我々は経済を新たな神とし、黄金の担い手となることを――
つまりは、この世の全てのいざこざをお金で解決しよう
というルールである
そして、オーバーロードナイトと呼ばれる魔法鉱石の力で作られたのが
黄金の楔である
そして、あらゆる係争はお金で解決できるようになった
勇者がモンスターを殴るなら、お金を支払わなくてはならない
勇者がダンジョンからアイテムを持ち出すなら、お金を支払わなくてはならない
魔王が村を焼くなら、住民を退避させ、お金を支払ってから焼く
魔王は四天王結成の際に、雇用契約を結び給料を支払わなくてはならない
そう決まったはずだ
決まったはずなのに
「黄金の楔は、すでに破壊された」
【禁忌指定1号】の好奇心が刺激された
もしかして
もしかすると
今この瞬間酒場を焼いても
お金を支払わなくていいのでは
焼け死ぬ誰かのことを考えなくてもいいのでは
……本当は、お金のルールなんか形式上のもので
本当は、本当は、本当は――自由なのでは?
試したく
なってしまったのだ
【禁忌指定1号】はそのようにして、3つの階層を炎で焼き尽くした
気付いたのだ
だれも、彼を止められないことに
「黄金の楔は……どうなっているんだ?」
「お金ですべて解決できるはずじゃなかったのか?」
「金ならいくらでも出す!た、助けてくれ……」
不安がダンジョンでささやかれたころ
動き出したものがいた
彼らこそ、カガクシャ
そして、【禁忌指定1号】を抹消し、不安はただの荒唐無稽な噂に変わった
あらゆる脅威を、ただの噂に変えていく
1号から10号まではそれでよかった
だが、11号のアンデライト魔王は……そうはいかなかった
知られてはいけない
それをカガクシャは知っている
どこかでまた、噂話
「黄金の楔は、破壊されたよ」
それを、カガクシャは、知っているのだ
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