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霧の残像領域

長文を流したいけど皆さんのTLを汚したくないときに使う場所です

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虚空のコラム『零と霧の間には』
霧の消えた世界で

霧のシルエットを追いかけていく


--- --- 


虚空領域に出現したハイドラと呼ばれる現象
謎の高性能機体
伝説に酷似した戦術
そして、その正体はいまだ謎である

彼女は哨戒用グレムリンに乗り、
今日もハイドラを追いかけている

戦場に紛れ込み、ハイドラを写真に収め
そして、研究を続けていた

ハイドラは恐ろしい存在だ
すでに、水平線近く……世界の果ての近くでは
常軌を逸した動きを見せている

すさまじい速さで繰り出すミサイル
忽然と次元の狭間に消える
そして、領域を殲滅する光

その姿を捉えたかった
理解したかった
そして、掴みたかった
霧の姿を

霧……世界に充満した赤い粉塵が
霧の粒子を吸着してしまった
そして、500年以上霧は出ていないという

「霧はあなたと共にあるんだよ」
「姿は見えなくても」
「たとえ、滅びたとしても」
「霧はあなたと共にある」

何度も聞かされた言葉
その言葉の主は、粉塵で肺が錆びつき死んでしまったが

霧を探したい
その答えが、ハイドラにある

そう決めた17歳の夜、
爆音とともに何かが落下した

船が揺れる
デッキに出ると、巨大なコンテナが近くで沈もうとしているのが見えた

「コンテナ……!!」

異世界からの贈り物である
どこからともなく振ってくるこのコンテナは
あらゆる生活必需品が詰まっている

船のクレーンを起動させ、急いでコンテナを確保する
運がいい
コンテナを手に入れられるのは、ほんの一握りのひとだけだ

《どうも、こんにちは》

開けようとすると、内部から声が聞こえた
ぞっとして手を放す。逆に扉が開いた。内側から

《はじめまして》

中にいたのは、錆びついたフレーム
グレムリンの、フレームだった

奇妙なフレームだった
テイマーズケイジのどれとも似つかない
錆びついたフレーム

「あなたは……?」
《ラスト・フレーム。錆びたフレームさ》

それだけを語った。沈黙が流れる

「所属は? どこの誰なの?」
《あなたの所属、あなたのラスト・フレーム》

それ以来、彼と戦場を共にするようになった
偶然手に入れた圧倒的戦力
売って手放すには惜しかった

それに、彼と話すのは好きだった
彼は霧の話を喜んで聞いてくれた

「霧を見たことある?」
《俺は、霧を浴びすぎてこんなに錆びてしまったのさ》
「冗談でしょ」

不思議な機体は、いつもハイドラの近くまで彼女を連れて行った

「どうして私のところに来たの?」
《霧を追い求めるためさ》
「そんなに霧に近づいているかな、私」
《ああ、これほど近いところはない》
「私はもっと近くに行きた……」
《危ない!》

画面に出るCAUTIONの文字!
ハイドラが白い靄を噴出し、身にまとう

あれは……

夢にまで見た

操縦が一瞬止まる
掴みたい
その姿を

「霧はいつもあなたと共にあるんだよ」

大きな衝撃を受けて大破するラスト・フレーム・グレムリン
操縦棺から這い出したときには、すでにハイドラの姿はなかった

彼女はぷかぷか浮かぶ自機を撫でながら、ため息をついた

「へましちゃった。もうすぐ霧を……」
《掴んださ》
「本当に?」
《霧はいつも君と共にある》
《俺はいつも君と共に》
《つまり俺は霧ということさ》
「冗談でしょ」

「でも……」


「悪くない冗談かな」


追いかけていく
霧のシルエットを

そこへ到達するために――


いつまでも、追いかけていく


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