長文を流したいけど皆さんのTLを汚したくないときに使う場所です
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薄暗い世界で、いくつもの輝きが瞬いていました

「第四紀を総括し、次の時代へとつなげよう」
「みて、メルサリアの力が、いま……無限に到達しようとしているよ」
「すべては指し示した通り……だね」

断続的に続くシグナルの音が、彼らの存在を告げています
ただ、普通のひとたちには、それがなんなのか分かりません
なぜなら、彼らはすでに滅びた形骸なのですから

音こそすれど、姿は見えないのです
霧笛の音だけしか、彼らは影響することが、できないのです

「第一紀よりは、よかったと思うよ」
「第二紀はどうだったかな……もう覚えていないや」
「第三紀は酷かったね。第四紀はよくやったよ」

彼らは第一紀と共に生まれました
第一紀の破滅の中で、生まれた存在です
彼らは世界を見届けます

「第四紀、霧の時代は――幸せな時代だったと思うよ」
「よかった」
「まだ終わっていないけどね」
「でも、もうすぐ終わる」

彼らの中の一人が、半透明の手をかざしました
すでに、到達した者には見えるかもしれません
高い高い塔の、いちばん上の窓から、ひらひらと揺れる腕
何を誘っているのでしょうか

「オーバーロードは不滅だよ」
「ぼくらはもう、滅びたというのに、あいつらはいつまでも生き延びる」
「うらやましいとも思わないけどね。あんなに形を変えてまで、生き延びようとは思わない」

かつて不滅だった彼らも、いまや儚い輝きとなった第四紀
何度塩の柱となってもよみがえった彼らは、
第二紀の終わりに絶滅しました

「全てに終わりが来るよ」
「そう、終わりとは始まり」
「それでは、第五紀の話をしよう」

霧が晴れたらどうなるでしょう
彼らは手を振るのをやめて、目を閉じます
少し、思案した後、一つの可能性を見ました

――第五紀

よく晴れた空の下
第7航空戦隊、6番機のカザミサは、ゆっくりと単機で虚空を旋回していた

「こちらカザミサ。眼下に海が見えるよ」
「管制より、6番機カザミサへ。遊んでないで甲板に帰ってこい」
「そう? 大事な任務だけど」

カザミサの乗機が太陽を背にして、シルエットになる
航空機ではない

背中に気嚢を背負っている姿は飛行船に見えるかもしれない
ただ、その下についているのは、まるで骸骨のような身体

四肢を持ち、頭があり、尾がある。人に似た姿

「こちらカザミサ。シルエット・グレムリン。異常なし。アルファからフォックストロットまで、全パーツ正常機能」
「霊障は無し……か。流石新型、シルエット・グレムリン……だな」
「霊障≪グレムリンズ・ギフト≫とか、縁起でもないこと言わないでよ。亡霊が出てきたらどうするの」
「はは、迷信を信じているのか? 悪い子には……グレムリンの贈り物。蛇が出てくるびっくり箱」
「それで、何機のグレムリンが墜ちたか……冗談では……ん?」

「何か、異常でも?」
「水平線がかすんでる。何あれ……」
「計器異常!霊障だ!帰還しろ!カザミサ……ハイドラが出るぞ!」

「アレは……霧?」


「霧……だと!?」



「千年出ていないんだぞ、霧なんて……」



青空を覆い隠す霧

千年前からの旅人

あなたは、時を超えて――


>>next mist of war
>>Gremlins Gift -Return of the Ambient Mist-


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ルクロフィーナは初めてその箱を見た

それは空の箱だ
黒いパネルでできた6面体の構造物
それが無機質な摩天楼のオフィスの一角、無造作に置かれている
背を屈めれば、ひとが一人入れる

「ルクロフィーナ、何だかわかるかね」
「四角いプラネタリウム」
「惜しいね」

姿を見せない彼は、静かに言葉を紡ぐ
ルクロフィーナは静かに箱に触れた。冷たいような温かいような

「これは何の装置なんです」
「ハイパーな装置さ」

彼女は理解した
ルクロフィーナは爪を噛んだ。これが、自分を更新し、新たな力となる

「もっとかわいいのかと思った」
「可愛くなるさ。いくらでもね」

もうすぐ、自分の姉妹たちはマーケットに並ばなくなる
代わりに、この箱が売られるという

「使ってみていい?」
「どうぞ、ご自由に」

マーケットの主の気配が消えた。彼は、世界にこの箱をばら撒くという
内部に入るルクロフィーナ。黒いパネルに浮かび上がる緑のシステムメッセージ

≪不明なユニットが接続されました≫
「失礼ね」

箱を閉じると、そこには闇があった。水の流れる音がした気がした

(おちつく……)

流星群のように目まぐるしく暗黒を流れるシステムメッセージ
ある夏の日を思った
二度と訪れない夏の記憶

≪不明なユニットとの接続を確立できません≫
「いうことを、聞け」

何も起きない。失望のまま、蓋を開ける

「失敗作だよ、これは、こん……!!??」

目の前に広がっていたのは……一面の、ひまわりの花畑だった

≪デバステイター・ユニット・領域殲滅兵器『ルクロフィーナ』……セーフモードで接続完了≫

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千年前。

ハイドラの発見によって役目を終えたドゥルガーは解体され、そのすべてのユニットが残像領域永劫化要塞へと封印された。ただ、アンビエント・ユニットを除いて

「ドゥルガー大戦の爪痕は大きく……」

ノイズだらけの壊れかけTVに映るのは、無機質な企業連盟のロゴ

少女は一人、旅を続けていた。キャリーバッグに乗せた携帯テレビの声を聴き、風の音に耳を澄ませる。遠くを見る

霧に覆われた荒野だった

少女は荒野の以前の姿を覚えている。輝く摩天楼が地平線の向こうまで続いていた

「経済は神なき世の、新たな神となり……」

全て破壊された。ドゥルガー大戦によって。少女は覚えている。領域殲滅兵器の光を

1500連装マキシマ・スーパーウェポン反重波制御式デバステイター・ユニット

もはや、地上に存在するあらゆるものが存在できないほどの殲滅。ただ、ドゥルガーだけは違った。ドゥルガーを殺すために先鋭化した進化でもってなお、ドゥルガーの「正面装甲」を破ることはできない

少女は、視界の中霧と平らな地面しかない、気が狂いそうなほどの荒野を歩いている。顔を上げた。そこには唯一、彼女の行く手を阻む障害物があった

ドゥルガーの残骸だ

暗黒の四角柱が霧の彼方に消えるほど高く伸びている。幅は10メートルほど

正確には、ドゥルガーのハイドロエンジンが臨界を起こした跡である

「これで145個目」

誰に伝えるわけでもない呟き。そもそも彼女はしゃべらずにはいられない。沈黙が苦手だ。TVをずっとつけていなければ落ち着かない

「我々はこれより、新たな世界の黄金の担い手となり……」

TVの声。空を見上げる少女。手をかざし、誘導を行う。やがて領域殲滅軌道要塞からのトラクター・ビームによって霧が円形に吹き飛ばされ、残骸は抜き取られ、青空の彼方へと消えていく

「皆のもとへ、おかえり」

再び何もない世界。誰のためのものでもない言葉

「千年後の君は、もう誰かに迎えられているのかな」


丸く切り取られた青空には、真昼の月がぼんやりと浮かんでいた

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来るべきユニット・オーバーロードに向けて
特殊ユニットの研究を行う機関

それが
白兎生体化学特殊兵装実験開発チームであった

一つはデバステイター・ユニットを
一つはランページ・ユニットを
一つはアンセトルド・ユニットを
一つはグリスター・ユニットを
最後に、実証DR開発を行う5つのチームに分かれていた

その一つ、デバステイター・ユニット開発チームの一人
彼は研究を終え、帰り道を歩いていた
まだ日が暮れたばかりの、薄暗い道だ

街の明かりが灯り始め、賑やかな光の粒を瞬かせる
ふと、彼は寄り道をした
気まぐれだった。列車のガード下をくぐり、地下道へ

彼はぎょっとした。なじみのない地下道に、急に店ができていたのだ

思わず覗き込んだ

ハイドラ・パーツショップ『雨傘日和』

そうとだけ書かれた、粘着テープ跡だらけの汚い窓をのぞき込む
中は無数のランプが煌めき、彼は目を細めた

誰かいる

いつの間にか、彼は店の中へ入り込んだ

女店主が一人、カウンターでうつらうつらと舟をこいでいた
ハイドラのパーツらしきものは見えない

「すみません」

「あい、なんでしょう」

「ハイドラのパーツは、どこに」

「目の前にあるじゃないですか」

ランプしかない。いや、まさか……

「これが……?」

「デバステイター・ユニット。暗夜領域照射誘導灯。何か?」

「デバステイター・ユニット? それは領域殲滅兵器……」

女店主は、にやりと笑う

「ユニットには4つのバリエーション。ただ、アンビエントとグリスターには3つしかバリエーションがなかった。4+4+4+3+3。全部で18の神器」

研究員の頭に火花が散る。伝承の領域遮断噴霧器と水粒爆縮投射装置の差異。ランページチームの疑問。その答えがあった

「夢だ……これは夢だ」

「そう、起きたら忘れる夢」

「覚えておかなくちゃ……こんな、大切なことを」

「できるかな?」

ゆっくりと消えていくランプ。闇の中、彼は必死にメモ帳を探す。闇に包まれていく。ペンを取り出す。なぜか、インクが途切れて書けない
涙を浮かべながら何かを書こうとし、何を書くか分からない自分に気付き、

やがて……

彼は自室のベッドの上で目を覚ました


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レジスタンスは戦い続けていた

解体され散り散りになった熾天使旅団と辺境自由同盟を拾い上げ
集められた精鋭たち

全員がWHで武装する辺境最大の武装組織へと成長する
まるで小川が次々と交わり、大河にそそぐように
虐げられ、追いやられ、踏みにじられた人々が集まっていく

彼ら一人一人の力は僅かな埃にも数えられないほど小さいかもしれない
けれども、戦いこそが、パイロットこそが彼らの力ではない

あるものは物資を寄付し
あるものは資金で援助し
あるものは他の方法で力を託した

レジスタンスの中隊の一つを任せられたのは、まだ幼い顔つきの残る、
狼のような戦士

ルオシュ。かつての軍団長の子息

彼にはまだ経験も知識もない
ただ、あるのはアンセトルド・ユニットへの高い適性
そして、アンビエント・ユニットを理解できた感性

ルオシュは今日も操縦棺内部で夜を過ごした
そしてそのまま眠りにつくいつもの夜だった

この日は、眠るのが少しだけ遅かった

緑色のシステムログが延々と流れる暗い操縦棺の中
彼は静かに瞑想していた

戦いの興奮の反動は静寂でしか癒すことはできない

「ルオシュ、旅は好き?」

ルオシュは答えない。スピーカーから聞こえる、幼い少女のような声

「旅は、家に帰るまでが旅なんだってね」

ゆっくりと闇の中目を開けるルオシュ
モニターに映るVOICE ONLYのアイコン

「帰る家が無かったら、終わらない旅を続けることになるのかな」
「ここが君の家だ。そして、君は何処へも行く必要はない」

ルオシュはまるで祈るように腹の上で手を組み、静かに瞑想から眠りへと移行した
薄れゆく記憶の中で、少女のような声が続く

「ルオシュ、ΑΦΡΟΔΙΤΗはまだ旅を続けたいんだよ」
「俺も同じ気持ちだ」
「ΑΦΡΟΔΙΤΗには無限の未来がある」
「俺も同じ気持ちだ」
「じゃあ、ぼくの次の言葉も、ルオシュと同じだね」

ルオシュからの返事はない。彼は静かに寝息を立てて眠りについた
スピーカーから聞こえる声

「ΑΦΡΟΔΙΤΗは無敵だよ。帰る家がもう無いもの。だからΑΦΡΟΔΙΤΗは永遠に旅を続けて、永遠に敗北も勝利もしないまま、ΑΦΡΟΔΙΤΗは……いや、彼女が生まれた時からずっと、ΑΦΡΟΔΙΤΗは……」

次の言葉は続かなかった

静かな棺の中には、ルオシュの寝息と、虫の鳴き声のような機械の駆動音だけがあった


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