長文を流したいけど皆さんのTLを汚したくないときに使う場所です
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ルクロフィーナは初めてその箱を見た

それは空の箱だ
黒いパネルでできた6面体の構造物
それが無機質な摩天楼のオフィスの一角、無造作に置かれている
背を屈めれば、ひとが一人入れる

「ルクロフィーナ、何だかわかるかね」
「四角いプラネタリウム」
「惜しいね」

姿を見せない彼は、静かに言葉を紡ぐ
ルクロフィーナは静かに箱に触れた。冷たいような温かいような

「これは何の装置なんです」
「ハイパーな装置さ」

彼女は理解した
ルクロフィーナは爪を噛んだ。これが、自分を更新し、新たな力となる

「もっとかわいいのかと思った」
「可愛くなるさ。いくらでもね」

もうすぐ、自分の姉妹たちはマーケットに並ばなくなる
代わりに、この箱が売られるという

「使ってみていい?」
「どうぞ、ご自由に」

マーケットの主の気配が消えた。彼は、世界にこの箱をばら撒くという
内部に入るルクロフィーナ。黒いパネルに浮かび上がる緑のシステムメッセージ

≪不明なユニットが接続されました≫
「失礼ね」

箱を閉じると、そこには闇があった。水の流れる音がした気がした

(おちつく……)

流星群のように目まぐるしく暗黒を流れるシステムメッセージ
ある夏の日を思った
二度と訪れない夏の記憶

≪不明なユニットとの接続を確立できません≫
「いうことを、聞け」

何も起きない。失望のまま、蓋を開ける

「失敗作だよ、これは、こん……!!??」

目の前に広がっていたのは……一面の、ひまわりの花畑だった

≪デバステイター・ユニット・領域殲滅兵器『ルクロフィーナ』……セーフモードで接続完了≫

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千年前。

ハイドラの発見によって役目を終えたドゥルガーは解体され、そのすべてのユニットが残像領域永劫化要塞へと封印された。ただ、アンビエント・ユニットを除いて

「ドゥルガー大戦の爪痕は大きく……」

ノイズだらけの壊れかけTVに映るのは、無機質な企業連盟のロゴ

少女は一人、旅を続けていた。キャリーバッグに乗せた携帯テレビの声を聴き、風の音に耳を澄ませる。遠くを見る

霧に覆われた荒野だった

少女は荒野の以前の姿を覚えている。輝く摩天楼が地平線の向こうまで続いていた

「経済は神なき世の、新たな神となり……」

全て破壊された。ドゥルガー大戦によって。少女は覚えている。領域殲滅兵器の光を

1500連装マキシマ・スーパーウェポン反重波制御式デバステイター・ユニット

もはや、地上に存在するあらゆるものが存在できないほどの殲滅。ただ、ドゥルガーだけは違った。ドゥルガーを殺すために先鋭化した進化でもってなお、ドゥルガーの「正面装甲」を破ることはできない

少女は、視界の中霧と平らな地面しかない、気が狂いそうなほどの荒野を歩いている。顔を上げた。そこには唯一、彼女の行く手を阻む障害物があった

ドゥルガーの残骸だ

暗黒の四角柱が霧の彼方に消えるほど高く伸びている。幅は10メートルほど

正確には、ドゥルガーのハイドロエンジンが臨界を起こした跡である

「これで145個目」

誰に伝えるわけでもない呟き。そもそも彼女はしゃべらずにはいられない。沈黙が苦手だ。TVをずっとつけていなければ落ち着かない

「我々はこれより、新たな世界の黄金の担い手となり……」

TVの声。空を見上げる少女。手をかざし、誘導を行う。やがて領域殲滅軌道要塞からのトラクター・ビームによって霧が円形に吹き飛ばされ、残骸は抜き取られ、青空の彼方へと消えていく

「皆のもとへ、おかえり」

再び何もない世界。誰のためのものでもない言葉

「千年後の君は、もう誰かに迎えられているのかな」


丸く切り取られた青空には、真昼の月がぼんやりと浮かんでいた

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来るべきユニット・オーバーロードに向けて
特殊ユニットの研究を行う機関

それが
白兎生体化学特殊兵装実験開発チームであった

一つはデバステイター・ユニットを
一つはランページ・ユニットを
一つはアンセトルド・ユニットを
一つはグリスター・ユニットを
最後に、実証DR開発を行う5つのチームに分かれていた

その一つ、デバステイター・ユニット開発チームの一人
彼は研究を終え、帰り道を歩いていた
まだ日が暮れたばかりの、薄暗い道だ

街の明かりが灯り始め、賑やかな光の粒を瞬かせる
ふと、彼は寄り道をした
気まぐれだった。列車のガード下をくぐり、地下道へ

彼はぎょっとした。なじみのない地下道に、急に店ができていたのだ

思わず覗き込んだ

ハイドラ・パーツショップ『雨傘日和』

そうとだけ書かれた、粘着テープ跡だらけの汚い窓をのぞき込む
中は無数のランプが煌めき、彼は目を細めた

誰かいる

いつの間にか、彼は店の中へ入り込んだ

女店主が一人、カウンターでうつらうつらと舟をこいでいた
ハイドラのパーツらしきものは見えない

「すみません」

「あい、なんでしょう」

「ハイドラのパーツは、どこに」

「目の前にあるじゃないですか」

ランプしかない。いや、まさか……

「これが……?」

「デバステイター・ユニット。暗夜領域照射誘導灯。何か?」

「デバステイター・ユニット? それは領域殲滅兵器……」

女店主は、にやりと笑う

「ユニットには4つのバリエーション。ただ、アンビエントとグリスターには3つしかバリエーションがなかった。4+4+4+3+3。全部で18の神器」

研究員の頭に火花が散る。伝承の領域遮断噴霧器と水粒爆縮投射装置の差異。ランページチームの疑問。その答えがあった

「夢だ……これは夢だ」

「そう、起きたら忘れる夢」

「覚えておかなくちゃ……こんな、大切なことを」

「できるかな?」

ゆっくりと消えていくランプ。闇の中、彼は必死にメモ帳を探す。闇に包まれていく。ペンを取り出す。なぜか、インクが途切れて書けない
涙を浮かべながら何かを書こうとし、何を書くか分からない自分に気付き、

やがて……

彼は自室のベッドの上で目を覚ました


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レジスタンスは戦い続けていた

解体され散り散りになった熾天使旅団と辺境自由同盟を拾い上げ
集められた精鋭たち

全員がWHで武装する辺境最大の武装組織へと成長する
まるで小川が次々と交わり、大河にそそぐように
虐げられ、追いやられ、踏みにじられた人々が集まっていく

彼ら一人一人の力は僅かな埃にも数えられないほど小さいかもしれない
けれども、戦いこそが、パイロットこそが彼らの力ではない

あるものは物資を寄付し
あるものは資金で援助し
あるものは他の方法で力を託した

レジスタンスの中隊の一つを任せられたのは、まだ幼い顔つきの残る、
狼のような戦士

ルオシュ。かつての軍団長の子息

彼にはまだ経験も知識もない
ただ、あるのはアンセトルド・ユニットへの高い適性
そして、アンビエント・ユニットを理解できた感性

ルオシュは今日も操縦棺内部で夜を過ごした
そしてそのまま眠りにつくいつもの夜だった

この日は、眠るのが少しだけ遅かった

緑色のシステムログが延々と流れる暗い操縦棺の中
彼は静かに瞑想していた

戦いの興奮の反動は静寂でしか癒すことはできない

「ルオシュ、旅は好き?」

ルオシュは答えない。スピーカーから聞こえる、幼い少女のような声

「旅は、家に帰るまでが旅なんだってね」

ゆっくりと闇の中目を開けるルオシュ
モニターに映るVOICE ONLYのアイコン

「帰る家が無かったら、終わらない旅を続けることになるのかな」
「ここが君の家だ。そして、君は何処へも行く必要はない」

ルオシュはまるで祈るように腹の上で手を組み、静かに瞑想から眠りへと移行した
薄れゆく記憶の中で、少女のような声が続く

「ルオシュ、ΑΦΡΟΔΙΤΗはまだ旅を続けたいんだよ」
「俺も同じ気持ちだ」
「ΑΦΡΟΔΙΤΗには無限の未来がある」
「俺も同じ気持ちだ」
「じゃあ、ぼくの次の言葉も、ルオシュと同じだね」

ルオシュからの返事はない。彼は静かに寝息を立てて眠りについた
スピーカーから聞こえる声

「ΑΦΡΟΔΙΤΗは無敵だよ。帰る家がもう無いもの。だからΑΦΡΟΔΙΤΗは永遠に旅を続けて、永遠に敗北も勝利もしないまま、ΑΦΡΟΔΙΤΗは……いや、彼女が生まれた時からずっと、ΑΦΡΟΔΙΤΗは……」

次の言葉は続かなかった

静かな棺の中には、ルオシュの寝息と、虫の鳴き声のような機械の駆動音だけがあった


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「こちらイオノスフェア要塞守備隊」
「定時連絡。異常なし。どうぞ」

イオノスフェア要塞は巨大な盆地に存在する要塞である
まるですり鉢のようなクレーター構造
これはアンテナとして機能すると言われている

「こちらイオノスフェア要塞守備隊」
「地震を観測した。震度1。たいしたことはない。珍しいが……」

「スロット1。ヴァリアブル・ウィンド・ユニット……正常機能」

「地震を観測……おかしい。自然の地震ではない」

「スロット2。フォックストロット・ブレード・ユニット……正常機能」

「異常事態発生! 地震じゃない! 何かが歩いている! 大きい……大きすぎる!」

「スロット3。ハイドロフォビア・ウルフ・ユニット……正常機能」

「防衛隊……壊滅! ダメだ、何が起きている……全部、凍り付いて……『禁忌』の力さえも、通用しなかった……」

「全システム正常機能。完全だ。そして、完璧だ」

「つ、繋がっていたら……聞こえていたら……巨人が……霜の巨人が現れ……およそ50メートル……いや、60……? 歌が……聞こえる。寒い……」



イオノスフェアは謎の未確認機の襲撃を受けて陥落した。その知らせを聞いた企業連盟の長、バルーナスは、力なく椅子に倒れこみ、蒸気アイマスクで目の疲れを癒したという

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