長文を流したいけど皆さんのTLを汚したくないときに使う場所です
勇者『常世神』
かつて存在した神を信仰する勇者の一派である

『常世神』は20階層からなる重圧試験階層『ガル』を本拠地とする

『常世神』の目的とは、神の復活である

いつから……
それは、神が滅びてすぐに、彼らは恐れを抱いたゆえ
神の滅びによって彼らは全ての恩恵を失い、
輝く蝶の塊となった

どこで……
それは重圧試験階層『ガル』において、神の顕現を目論む
重圧試験階層『ガル』は、魔王『ガル』の住まう場所
あらゆる試験を繰り返す術導実験場である
ここに侵攻した『常世神』は、神の実験を繰り返す

誰が……
『常世神』。それは、永遠にさまよい続ける信徒の群れ
神なき世に神を探す、無為なるものたち

何を……
神を。神の顕現を。魔王『ガル』は戦いのさなかにあった
勇者『最終試験前夜』は『ガル』と敵対する勢力であり
術導実験場であるこの階層を破壊するために生まれる
魔王『ガル』はできそこないの神を再現するため、あらゆる手を尽くした
魔神の復活。失われた神の威光。それを利用すべく、『常世神』は行動を開始する

なぜ……
それは、『常世神』が消えゆく存在ゆえ
かつての栄光は遠く、滅びに向かう『常世神』
這い上がる手は一つしかない
それは、神の復活である
いつか、彼らの願いが叶う時
神はその姿を彼らの前に表すだろう

どのように……
それは、『常世神』の最後の賭け
『常世神』はいずれ消えゆく定め
輝きと光を失い、化石となる定め
しかし、それゆえ彼らは不滅である
いつか、彼らの願いが叶う時
神はその身を彼らの内に委ねるであろう

『常世神』は歩き続ける
数多の敵を屠り、魂を流し、葬列を作る
そして、いつの日か疲れ果てて眠るだろう

眠りから目覚めるまで
いつか、彼らの願いが叶う時

黒い、水の流れる棺が、彼らの破片をつなぎとめる日まで

そのとき、神は確かに顕現するであろう


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「下の階層でドラゴンが目覚めそうだ」
「天使の集団が32階層上で失踪したらしい」
「今年のトレンドは……猫の置物!」

酒場で交わされるたわいもないウワサ
ウワサはどこまでも広がり、形を変え
信憑性を失っていく

【禁忌指定1号】は魔王だった
彼は、その日も酒場で広域メッセージを聞いていた
彼は酒場でのささやきが好きだった

彼はどこへも行かず
想像の世界を旅していた
その日も、噂を聞きに酒場へとやってきた

「カガクの力って?」
「この世はドラゴンの見る夢のかけら」
「ドゥルガー試験を目指す君へ……」

無数に流れゆく噂に、彼は一つの言葉を聞いた

「黄金の楔は、すでに破壊された」

その時彼は、持っていたグラスを落としてしまった
慌てて零れた飲み物を拭く

確かに聞いた
確かに聞いたのだ

”黄金の楔は、破壊された”ということ

「そんなはずはない」

虚空を見下ろした【禁忌指定1号】は、震える手で机をぬぐった

黄金の楔

それは、この世のルールである

神なき世に我々は経済を新たな神とし、黄金の担い手となることを――

つまりは、この世の全てのいざこざをお金で解決しよう
というルールである
そして、オーバーロードナイトと呼ばれる魔法鉱石の力で作られたのが
黄金の楔である
そして、あらゆる係争はお金で解決できるようになった

勇者がモンスターを殴るなら、お金を支払わなくてはならない
勇者がダンジョンからアイテムを持ち出すなら、お金を支払わなくてはならない
魔王が村を焼くなら、住民を退避させ、お金を支払ってから焼く
魔王は四天王結成の際に、雇用契約を結び給料を支払わなくてはならない

そう決まったはずだ
決まったはずなのに

「黄金の楔は、すでに破壊された」

【禁忌指定1号】の好奇心が刺激された

もしかして
もしかすると

今この瞬間酒場を焼いても
お金を支払わなくていいのでは
焼け死ぬ誰かのことを考えなくてもいいのでは

……本当は、お金のルールなんか形式上のもので
本当は、本当は、本当は――自由なのでは?

試したく
なってしまったのだ

【禁忌指定1号】はそのようにして、3つの階層を炎で焼き尽くした
気付いたのだ
だれも、彼を止められないことに

「黄金の楔は……どうなっているんだ?」
「お金ですべて解決できるはずじゃなかったのか?」
「金ならいくらでも出す!た、助けてくれ……」

不安がダンジョンでささやかれたころ
動き出したものがいた

彼らこそ、カガクシャ
そして、【禁忌指定1号】を抹消し、不安はただの荒唐無稽な噂に変わった
あらゆる脅威を、ただの噂に変えていく
1号から10号まではそれでよかった
だが、11号のアンデライト魔王は……そうはいかなかった

知られてはいけない
それをカガクシャは知っている
どこかでまた、噂話

「黄金の楔は、破壊されたよ」

それを、カガクシャは、知っているのだ

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生まれた時からファイターで
死ぬときまできっと


・・・・・・・


彼はファイターとして生まれた
ファイターというモンスターは人間に似ている
器用貧乏な性能と評される
目立たず、光の当たらない種族

彼は、ダンジョンをさまよっていた
彼を雇ってくれる魔王、それを探して

ガチャガチャ鳴る鎧
錆びて鞘から抜けなくなった剣
気付けばこんな姿になっていた

「生まれたときは、みな輝いていたのに」

愚痴る声も闇に消える
ほの暗いランプの光は足元まで届かない


・・・・・・・


そもそも、魔王は消えようとしていた
原因ははっきりしている

カルマの神≪ベネリウム≫
そして、禁忌選定委員会

ベネリウムは世界の破滅を予見し
禁忌選定委員会はその原因を調査した
そして、一つの結論を出す

原因は、一人の魔王であると

世界が滅びるなら、魔王である意味がない
なぜなら、財宝を魔王城に溜め込んでも、無意味だから
ほとんどの魔王はそう考え、勇者に転職し、散財を始めてしまった

だって、勇者ならアイテムを好きなだけ買って
モンスターを虐めて
どんどんレベルアップして
楽しい暮らしを送ることができるから

魔王なんてつまらない
勇者をもてなして
勇者に満足してもらって
自分を押し殺し、勇者の立役者になって
苦痛の対価とばかりにお金をもらうだけ

そのお金も意味がなくなる。世界が滅びるから

だから、魔王は消えていく

そして、彼の居場所も、消えていく


・・・・・・・・・


孤独なファイターが、職場を探してダンジョンを歩き続けていた

彼の居場所はない。少なくなった魔王の元へは、もっと優秀な護衛が名乗りを上げて、彼のような器用貧乏な護衛はなかなか雇用されない

ランプの油がじりじりと焦げてきた。もうすぐ消えてしまうだろう
最後に、最後に彼は願った

「頼む、俺を認めてくれ……世界に、俺の居場所があるって、証明してくれ……」

疲れ果て、彼は歩みをやめた。ランプの灯が消える
闇の中、狼がやってきて、彼の身体を食いつくしてしまうだろう
そんな、はぐれ護衛たちを何度も見てきた

雑巾のように汚れた衣装のまま、うずくまるプリンセス
骨と皮だけのようなビースト
喚き声を上げて自爆したボマー

みな、最後は狼の餌になってしまった
静かに、彼は自らをそれに重ねて、涙した



彼は顔を上げる
ダンジョンの闇にまばゆいネオンサイン
四畳半の領域が姿を現す
魔王だ
魔王がやってきたのだ

「まさか」

「南にベッドを、東に書を。西へゆくものに、迷宮の道を」

シルクハットをかぶった紳士が、ネオンサインを身にまとい立っていた

「硬質に一つ足りない。きみ、接客はできるかね?」

「どうして、俺を、見つけて……」

紳士はにやりと笑う

「ひとつ、マーケットの主が、私を導き」
「ふたつ、君が……ここまで、歩いてきたからだよ」



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魔王がなぜ魔を冠するのか
それについては第一紀と共に失われてしまった

魔王がなぜ虚の王権を持つのか
それについても第一紀と共に失われた

ある者は言う
「魔王城に住むから魔王なんだよ」と

では、魔王城とは何か

それは魔王の――支配領域である

ゆえに、魔王は魔を冠し
自らの領域の王権を持つ

- - - - - - - ここから - - - - - - -

私は目を覚ました
目覚まし時計はデッドライン
跳び起きて布団を跳ね飛ばし、
急いで歯を磨いて顔を洗う
朝の支度は超特急。各駅停車なんてやっていられない
丁度今、朝食駅をすっ飛ばし通過したところ

ベストなドレス、ベストな眉を書き
超高速で店を「展開する」

間に合った。すぐさま、勇者たちがなだれ込む
ここはダンジョン6423階層の一角
繁華街に隣接しているから、ついでの買い物で寄る勇者も多い

勇者は見たはずだ。ダンジョンに無造作に取り付けられた扉を開く
その先に広がる、岩山の尾根道
剣の頂にそびえる針山のような無数の尖塔

そう、時空が歪んでいるのだ
ドア一つ先は、魔王の領域

尖塔からの眺めは素晴らしい
尾根道を突進してくる勇者たち

彼らは知るだろう
この魔王城で待ち受ける……エッグベネディクトの味を

- - - - - - - ここまで - - - - - - -

この間僅か四畳半
魔王は魔であるからして、魔の領域を持つ
魔王は王であるからして、魔の領域を支配する

その大きさを測るとするなら、畳にして4つと半

これは神なき世の、聖なる魔の時代
魔の領域はやがて消えゆく灯となり
照らすは闇のダンジョン9999階層

――聖魔領域永劫環境化計画
それは、繰り返す世界に終止符を打ち
すべてを幸せのうちに報いるはずだった

――他化自在天制御体系
それは、全てを思いのままに
それは、心魂を輪廻の棺に委ね
それは、いまだ完成せず

それは――円陣で動いていた


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突然、商売を始めることになった

理由はたくさんある

そろそろ働かなくちゃいけないとか
家を継ぐだとか
ほんの少しの好奇心とか

そして、世界を救うとか

とにかく、このダンジョンの片隅は猫の住処より狭い
成人魔王に与えられる土地は僅か四畳半
それもこれも、大いなる繁栄の力が人口を増やしているからだ

超高層ダンジョン9999階
朝のここはまるで戦場

そこら中から猛牛の鼻息みたいに、炊事と朝シャンの湯気が立ち上る

ぼくはというと、そんな割り当てられた小さな世界の片隅で
横になってまどろんでいた

商品を買うひとっているんだろうか
自分の接客は大丈夫だろうか

とりとめのない思考
霞がかった不安

分かることがある
需要はある、ということ

それは、勇者のライフスタイルと直結している
魔王と勇者が和解し、平和が訪れた世界
昔はモンスターを倒すことで、魔王を倒すことで、勇者は名声を得ていた
それでプリンセスなんかと結婚できたというのだからうらやましい

今は違う。そんなことをしたら、カルマの烙印を押される
だから、勇者は商品を買う
自らのステータスを得るために、商品を買って、自分を満たす
そして、勇者はモンスターのサービスを受ける
殺戮して経験値を稼ぐ時代はもう終わり
いまや勇者はビーストカフェで冷気獣を撫でたり
ハーピィ劇団の劇を見て経験値を得ている

全てが暴力の世界から、商売の世界に塗り替えられてしまった

いつからだろう

魔王も働かなくてはならなくなってしまった

昔は玉座に座って水晶球を覗きながら、適当に指示していればよかったという
いまや、納品チェックに陳列清掃
まるで召使みたいに右往左往

でも、生きるためには仕方がない
世界の仕組みがそうなってしまったのだから

いつしか朝の喧騒は静まり返り、誰もが出勤したか、労働している時間となった
すこし、居心地が悪い時間だ

明日からの準備をしなければ
そう思って、壁に積み上げた段ボールを一つ一つ開封する

ベルが鳴る
玄関のベルだ

覗き穴から見ると、ドアの外に王女様が立っていた
正確には、王女様のみすぼらしいコスプレをした少女が

そう、いまは神なき世
経済の遍く支配する世界

「やぁ、従業員に応募した……」
「あなたのプリンセスです! プリンセス第16専門学校を卒業し、明日から働かせていただくため、ご挨拶に来ました!」

王女様だって、働かなくてはいけないのだ


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