霧の残像領域

長文を流したいけど皆さんのTLを汚したくないときに使う場所です

虚空のコラム『青花師団《デルフィニウム・ディビジョン》』
破壊すればいい。君がいつも、そうしているようにな。勝手に破壊していろ
――デルフィニウム・ディビジョン《ツルギ中将》


デルフィニウムの花は、自由の青に咲く
それは海の果て、天体が沈む深く深い青と青の境界――

青花師団は、厳しい外洋の荒波の中で、互いを助けるために自然と結成された
外洋は危険だ
巨大な空母もまるで木の葉のよう

資源の枯渇
食料と水の確保
襲い掛かる「脅威」

そして、肥え太っていく他勢力
それらの圧力を躱し
海の荒くれは生きていた

海賊まがいの存在は、いつしか高い目標の元
秩序を形成していった

絶滅した花、デルフィニウムの紋章
その下に集った自由の船乗りたち

ツルギ中将も、そんな一人だった

――

青花師団
第一師団、第29掃海隊旗艦、重巡洋艦《モルフォ・マム》艦長
渦巻く青い煙香の菊花、ツルギ中将

彼の部屋は、常に香が焚かれ、常に煙っぽい
反霊香、というキク科の植物を乾燥させた香だ
これは別に蚊に刺されないとかではない

ただ、失われた心を取り戻す、とだけ伝わっている

モルフォ・マムは航海を続けていた
第29掃海隊は、外洋最強と称えられる青花第一師団の構成である
空母1隻、重巡洋艦1隻、軽巡洋艦7隻、駆逐艦16隻からなる

モルフォ・マムは青花第一師団の主砲であり
かつて存在した戦艦の面影を残す骨董品である

ツルギ中将はそんなモルフォ・マムの艦長であり
優秀な指揮官であり
後は煙に揺られてまどろんでいるだけの人間である

彼はグレムリンに乗らない
指揮官だからだ、と彼は言う

ツルギは目を閉じる

艦長室の煙が、彼のまぶたに幻覚を見せる

18年前

少年だった彼には、同い年の友人がいた
二人でおんぼろの空母から、かつてのモルフォ・マムを見た

「いつか、あれに乗って戦うんだ」

幼いツルギはそう言った。友人は笑った。本気だ、と怒るツルギ

(なつかしい記憶だ)

いつものように、悪夢が始まる

重粒子投射実験

失われた船に、ツルギはいた

目の前で倒れる友人

両手に降り注ぐ粉塵

友人から漏れる赤

見上げると、そこには、空中を疾走する虹色と、


――原初の、ゴースト・グレムリン


目を覚ますツルギ

(昔の話だ)

コーヒー淹れ、反霊香にコーヒーの香りが混じる
やがて彼は見るだろう

空中を疾走するグレムリンを

(……)

ゴースト・グレムリンは友人を救ってはくれなかった
それから、ツルギは――


ずっと、一人だった


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