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霧の残像領域

長文を流したいけど皆さんのTLを汚したくないときに使う場所です

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霧のコラム「企業の影」
時は過ぎる

苗木は大木になり、小川は渓谷を築く

企業もまた、成長を続けている
残像領域に倒産はない。そもそも経済競争などない。あるのは力と力のぶつかり合いだ。企業は実力行使でもって敵対企業を粉砕する
だから、法に守られた倒産など存在しない。あるのは、完膚なきまでに蹂躙する破壊だけだ

ただ、それでは安心がない。誰だって枕を高くして寝たい。そして、秩序が生まれた。戦闘機械と乗員を駒にしたチェス・ゲーム。その勝敗すらも秩序に満たされている
昨日勝ったから、今日は勝ちを譲ろう。今日は接待、明日は取り分を得る。そうやってWIN-WINの関係を維持する。欠けた駒など新しく買えばよい

その秩序を企業連盟と呼んだ

秩序は成長を続ける

大木は幹の内側から腐る。渓谷は斜面の崩落を誘発させる

企業連盟は無敵だった。従わないものは力ですべてねじ伏せた。金にならない辺境の無法者どもは無視していた。取るに足らないものばかりだ。企業連盟は退屈していた

霧笛の音が聞こえる

連盟議会の議題に挙がったのは、一つの組織。≪霧笛の塔≫
霧笛の塔は謎の機関だった。マーケットとのパイプを持ち、ハイドラのサポートを行っている。ハイドラは力である。そして、その力は秩序にとって目障りだった

力は一つだけでよい

力は成長する。苗木のうちに、小川のうちに処理すべきだと


時は過ぎる

霧笛の塔の派遣仲介人、ノラ。彼女は、子犬の写真で飾られた操縦棺に乗り込み、ミストエンジンを起動させた。今日で早すぎる仕事納めだ。空は青く、霧が薄い日だった
口笛を吹き、機体を発進させる

「本日は輝かしい日である、ってね」
「輝かしい? どこが?」

VOICE ONLYの表示の向こうから、通信が続いている

「全てを失おうとしているのだよ、君は」
「失う? 何を?」
「全てだよ」
「違うね」

ノラは仕事場に向かっていた。ハイドラの戦いを見届けるためだ。それも今日で終わる

「私は何も失っていない。私は自己を保持している。そして、ただ……」

彼女は子犬の写真を一枚手に取り、キスをした

「ただ、時が過ぎただけだよ」

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