霧の残像領域

長文を流したいけど皆さんのTLを汚したくないときに使う場所です

虚空のコラム『翡翠経典《ハルシオン・スートラ》』
死ぬのが嫌なら、簡単さ。破壊される前に、破壊してやるんだ
――ハルシオン・スートラ《ミラー大将》

ハルシオンは春風を告げる鳥
そして、清浄なる川辺に飛ぶカワセミ――


翡翠経典は解体された宗教団体『ヒルコ教団』を母体とする勢力
その教義は、秘伝となっている書物、翡翠経典の解釈による
翡翠経典は誰も読むことができず、口伝のみその解釈が伝わる
これは、真なる「原理」を廃することで正統性を持った言説を封じるという
それもまた解釈の一つである

大体に一致する解釈は以下のとおりである
・本人の自助による救済
・神々と下界との相互不干渉
・神々と下界との相互影響
・欲望や迷い、怒りの否定
といったものが挙げられる

これを信じ、翡翠経典の元生きる者たちは
この滅びゆく世界の中、救済にすがって生きている

ヒルコ教団の悲願である神の復活がなされ
役目を終えたヒルコの神は滅び

そして……

この世界には、滅びと人々だけが残されたのだ


――


翡翠経典第一軍
第一機甲師団師団長
永遠に限りなく近づいたもの、ミラー大将


彼は2か月ぶりの組織定着を終え
再び17歳の身体を取り戻した

魂の年齢は、38歳を数えている
ただ、彼は20歳の時、大きな事件に巻き込まれた
大けがを負った彼は、自らの肉体を捨てる決断を迫られる

肉体の完全なる培養組織交換手術
いわゆる、新生体である
脳も含めた、身体の100%をバイオ生体と交換する
それによって、彼は永遠に17歳の肉体を手に入れたのだ

ミラーは、目を覚ます
また、例の夢だ
自分が自分でなくなる夢
自分が見知らぬ誰かになって
知らない誰かと笑い
知らないところに暮らす夢

迷いを断ち切れ
恐れを、消し去る
そう、教えられたはずだ

それでも、ミラーは常に死の恐怖と戦っていた
いくら若くとも
いくら、健康を手に入れても
運命の到達する距離は万人に与えられている
死が、迫っている
フェイタルポイントの距離を実感したのは
一度や二度ではない
それでも、奇跡的に距離は伸び
いまは計測不能の安全地帯にいる

もしかしたら、自分はもう死んでいるのかもしれない
そう思うことが増えた
知らない誰かの記憶は
死んでしまった「前世」の記憶
そして、自分は新たな17歳となり、いつか死に
そして、次の自分の「前世」となる
そんな妄想を繰り返していた

「いやだ」

ミラーは迷いを断ち切り、
自分のグレムリンに乗り込んだ
ここは魂が安らぐ
ここにいるときだけ
ミラーは穏やかに過ごせる

なぜなら、知っているからだ
自分は絶対に生きて帰る
この機体、自分の専用機であり、翡翠経典最強のグレムリン
アンリミテッド・フレーム《ジェイド=エリュシオン》

なぜなら、運命への距離がまだ、その時を示していないのだから


拍手[2回]

コメント

コメントを書く