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「大きくなったら、ハイドラライダーになるんだ」

夢。残像領域に漂うミルクのような、甘く、濃く、息が詰まるような夢。ハイドラライダーは特権階級である。ライダーズライセンスという資格があり、ハイドラに乗れるものは限られている

ライセンス獲得の門。それはどこに開いているか分からない。黒いスーツのエージェントが突然現れ、何の準備もしていなかった夢見がちな者にライセンスを与える。あるいは試験がある地方もある。高額で取引されている地方もある。いつの間にか引き出しの中に入っている場合もある

「どうして……こんなにも、求めているのに……ライセンスが手に入らないんだ」

ライセンスを持ったものは、マーケットに出入りすることを許される。マーケットにはハイドラのパーツが並び、そのパーツを集めれば簡単にハイドラは組みあがる

パーツの価値はいくらほどだろう? 実際には、たいしたことはない。あえて日本円で例えれば、1つのパーツは4万円分のクレジットがあれば最低レベルのジャンク品が手に入る。仮設操縦棺、仮設脚部に至っては無料で手に入る

それは組織から……誰も、何の組織か分からない、マーケットの支配者からの補助金があるから、ライダーの負担は限られているのだ

「結局は夢なんだ。ライダーになるなんて、夢だったんだ」

一人の男がジャンクの山から錆びた部品を拾い集め、籠一杯にして住処へと戻った。少年は大人になり、霧が晴れたようにおとぎ話を捨て、大人になった

男は巨大な人形を組み立てていた。操縦棺に見立てた箱。ガラクタをつなぎ合わせた脚部。それだけの人形。男は夢を捨てた。けれども、男は満足はできなかった

こうして行き場を失った思いを虚像に託し、ようやっと安らぎを得ていた。操縦棺に横になり、うとうととまどろむ。夢が潰えても、幼き頃聞いた、ハイドラの咆哮はいつまでも耳に残っていた

それは幻聴ではない。あの時、心を砕いた叫びは確かに存在していた。ライダーになって、戦場を駆ける自分。いまの、ジャンク漁りの自分。二人は、どこで道を間違えたのだろうか。あの時、二人は確かに一つだった

『HCS、認証に成功しました。ようこそ、メンテナンスモード、開始します』

機械音声で目を覚ました男。すぐに、眠気が吹き飛ぶ。ただの箱だったはずなのに、壊れたモニターには電源すらないはずなのに、グリーンに発光しシステムログを流している

そのモニターには、無造作にガムテープで、銀色に光るライセンスカードが張り付けられていた

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