長文を流したいけど皆さんのTLを汚したくないときに使う場所です
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残像領域は、いつも霧と共にある

パンは数日でカビてしまう。だから、できるだけ素手で触れないようにする。でも、案外カビてしまう

一人の青年が、かびたパンのかびをナイフでこそぎ落とし、オーブンにぶち込んで滅菌した。パンが焼ける間に、すっかり湿ってしまった新聞を開く

霧笛が聞こえる。視界の悪い世界で、大型浮遊艦が恐る恐る、衝突しないように進んでいるのだ。青年は霧の向こうから美少女が突っ走ってきてぶつかるのを想像した。きっと彼女のくわえたパンもカビているはずだ

「let's go with mist ~♪」

調子はずれの歌を口ずさみ、レバーを引く。ミストエンジンがうなりを上げ、霧心室の霧粒子をミキサーのようにかき混ぜる。水温が上がる前に、霧粒子は残像平衡状態になり、マシンに力を与える。彼は別にその原理も知らない。ただ、

「ご機嫌だな」

それだけは分かる。そして、それがいちばん重要だということも

霧が何なのか、はっきりわからない。水の粒子がどうして漂い続けるのか。どうしてそれが空気中でハニカム状に連鎖した構造をとるのか。けれども、その機嫌はよくわかる。残像領域に住まう者たちの勘だ。オーブンの熱が操縦棺内部の室温を上げる。少し肌寒いから、これで丁度いい。ヒーターよりも、料理ができる点で優っている

目標、大型浮遊艦。ジャンクハンターは時としてハイドラを駆り、大物を狙う

「残念ながら、お前が衝突するのは美少女じゃない。かびたパンと、一本の杭だ」

大型パイルを構え、彼はブースターを起動させる!

「行こう、霧と共に」

オーブンのパンは、すっかり焦げていた

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