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霧の残像領域

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霧のコラム「決してどこへも到達しない腕」

最初はただの箱だった操縦棺が、次第に殺戮兵器のフォルムを形どっていく。それは奇しくも人間の形に似ていた

頭によって光景を得たハイドラは、次に腕を搭載されることとなる。「窒息戦争」と呼ばれる最初のハイドラ大戦が生み出した次なる眼であった

27か月に及ぶ、視界30センチの霧はもはやまともな戦争を生み出さなかった。記録に残っている組織は3つ。それらの組織が互いにハイドラ開発競争の果てに、戦争を起こしたという。すでに失われたパーツ、「領域遮断噴霧器」と呼ばれる戦略噴霧器によって、戦場はその名の通り窒息寸前の霧に包まれた

光学センサーパーツである頭は死に、レーダー搭載頭へと変遷していく。しかし、付け焼刃に他ならない。新たなセンサーが必要だった。生み出されたのは、腕だった

まるで触覚だった。10メートルの腕がハイドラの機体から伸び、深い霧の中獲物を探す。腕が獲物に触れた瞬間。肉薄し火器をばらまく。やがて、格闘武器が生まれた。代表的な武器は「デュアルブレード」「ヒートストリング」である。手数を重視したこれらの兵器によって大破したハイドラが今も発掘されている

27か月のあとに、破局は訪れ、戦争は終わった。霧が晴れた後、横たわる無数のハイドラの残骸はまるで大地を埋め尽くすほどだったという。腕はその時役目を終えたかに見えた。けれども、腕はなんとか技術の継承に成功し、今も命中精度補正パーツとして活躍している

その性能は全盛期のものとは比べ物にならないかもしれない。それでも、濃霧の中、手探りで生きる地獄よりは。キスする相手の顔さえ見えないと言われた地獄よりはましかもしれない

いまでも霧が濃くなると、ハイドラは恐れを抱くように腕を振り上げ、空に向かって手を伸ばす。その腕はどこにも到達することはない。それでかまわないのだ。その伸ばした腕の先、敵を絞め殺すことしかできないのだから

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