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霧の残像領域

長文を流したいけど皆さんのTLを汚したくないときに使う場所です

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霧のコラム「インカネーション」
何かを作る
何かを描く
そういった行為に際して
自身の影響を取り除くことはできない
なぜなら、創造というものは自発しないからだ

では、最初の一つは、どこから来た?

「このアセンブルは失敗だ」

彼はそう言って、シミュレータの電源を落とした
落とさねばならない
落とさなければ、彼は愚かにも徹夜をして
明日を台無しにする
それが分かっていた

ベッドに身を投げ、明日を思う
シルウェストリス・ハイドラ中隊壊滅
その知らせは、彼の背筋を凍らせた

ここからは、生と死の分かれる世界なのだ
そして、彼の準備はあまりにも未達だった

「あした、考えよう」

彼は夢を見た
夢の中で、彼は扉を見つけた

扉の向こうは海に通じている。それが分かった
暗い、深い、水の果て
押し寄せる潮流の大きな流れが
轟音となって胸の奥を叩く

彼は周りを見渡した
一面のひまわり畑である
ただ、四角く切り取られた海への扉が見える

「ハイドラは、ひとの思いを映す水鏡」

誰かの声が聞こえた
行き先の分からないRPGのように、彼はどこにも行けず
耳を澄ましていた

「ハイドラは、ひとの思いのままアセンブルされる」
「アセンブルしすぎか……」
「自身の答えが、そのままハイドラの形となる」

会話が成立しない
まるで、謎の声は、自分に言い聞かせるように、彼を無視していた

「ハイドラの黒は、漆黒の潮流。ハイドラの緑は……」

どうすることもできないので、彼はひまわりに囲まれたまま
アセンブル案を練った

謎の声によれば、ハイドラのアセンブルは
その人の心を映す鏡だという

「アセンブルが決まらないってのは、俺が迷っているってことかよ」

実際そうだ
迷っていた

ライダーの取りうる選択肢は二つ
生存優先か
死亡許容か

個人個人によって違うが
HCS(ハイドラコントロールシステム)のオプションによって
撃墜される瞬間強制脱出する機能のON/OFFが可能である
これを手動にするのが死亡許容である
手動で撤退する必要はあるが
マニュアル化によってHCSの負荷が減る

それによって、ハイドラの真の力を発揮できる

かつては、強制脱出機能をOFFにすると、本当に死ぬまで戦っていたという
しかも、空いた負荷の分謎のプログラムがHCS上で動いており
そのデータと引き換えに報酬を上げることができたという

まぁ、それはそれとして、生きるか死ぬか、ということだ

彼は焦っていた
ハイドラライダーになって
思うように稼げず
燻ぶった日々を過ごしていた

命を懸けるつもりはない
だが、それでは現状を打破できないかもしれない

停滞した感覚

「停滞……か」

ステイシス、というシステムがある
出力効果を多重発動させ、自身の行動さえ犠牲にして
必殺の一撃を放つ

「これが、俺にふさわしい」

そう決まったら、話は早かった
アセンブルを組み替え、そして――

「ハイドラの緑は六月の色。霊障の輝きは、摘まれる新芽に捧げる色。なぜなら――」

「ハイドラの棺は彼女の棺。黄金の――」

謎の声は、続いていた


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